EarthLink Network は、Claude Code を開発の主体に据え、20 を超えるプロダクトを自社で開発・運用しています。本記事では、その全体像をご紹介します。
先に、この記事で分かることを置きます(読了は約 7 分)。
会社(EarthLink Network)の全業務を、AI で回そうとしています。ひとつ作れば済む話ではありません。作る → 監視する → 補修する → 管理する → その管理を管理する、と必要が次々に現れ、その一つひとつが次のプロダクトになりました。だからここに並ぶのは、はじめから狙って作った製品ではなく、「AI 時代に、チーム開発をどうするか」を探す過程で生まれたものです。
人は判断に専念し、決まりきった実務は AI に渡す。次世代の生産性は開発の速さではなく、判断の正しさと数で測られていく——そう考えて、いま18のプロダクトを動かしています。
このページは、いま EarthLink Network が作っているプロダクトの一覧と、それぞれの説明、そして当社が何を作り、どう自動化を進めているのかの概要をつかむための index です。
現在は開発中のものも含みます。公開に向けて、各プロダクトの画面キャプチャや説明、ランディングページへのリンクを少しずつ増やしており、随時更新しています。
各プロダクトの詳細と画面、そして多言語版(英語・韓国語・中国語・タイ語)は、会社の公式プロダクトページにまとめています。こちらは常に最新の状態へ更新しています。
platform — 複数プロダクトの共通部品を1か所に集めた monorepo(複数パッケージを1リポジトリで管理する形)です。ブロックエディタ・DynamoDB 共通処理・レート制限・通知などを各リポジトリから移し、利用側を実測で切り替えてから元を畳みました。この片づけの途中で、利用ゼロを確認できた共有ライブラリのリポジトリを8個畳みました。もう1つ(旧 lime)は利用側リポジトリの切り替えを進めている最中で、それが済み次第畳みます。
onion — 全プロダクトのログインを1つに束ねる SSO 基盤(1回のログインで複数サービスを使える仕組み)です。promptflow・sage・alive365・plovant などの認証をまとめて引き受け、クライアント発行やトークン失効といった運用まで API 化してあるので、他リポジトリの CI や Claude から直接動かせます。多言語も10言語×16領域=13,080 メッセージを検証エラー0で通しています。
notify — メール・Slack・LINE・Webhook をまとめて扱う共通の通知基盤です。各プロダクトが通知を自前で実装せずに済むよう切り出しました。送信先に優先順位をつけ、先頭が失敗したら次へ自動で切り替えるフォールバックや、同じ送信を二重に飛ばさない冪等キー付き API(同じ鍵の再送は安全に無視する仕組み)を備えています。
dotvault — .env・.npmrc・kubeconfig・証明書などの秘密情報を、dotvault pull の1コマンドで各自の PC や CI に配れる、自作の secret 配布 SaaS です。利用者は AWS アカウントを持たなくてよく、Doppler や Infisical の自作版という位置づけです。5月末に仕様書から書き始め、6月の1か月で組織・権限・監査ログ・課金までを127コミットで組み上げました。


billing — 複数の自社 SaaS の課金を1か所に集約する基盤です。Stripe(決済サービス)を包み、契約・クーポン・都度課金を API 一本で扱い、決済や解約が起きると署名付きの Webhook(サーバー間の自動通知)で各サービスへ知らせます。5xx で失敗した通知は1秒→5秒→15秒で最大3回まで自動で送り直します。
sage(usesources) — project を軸に、wiki・タスクボード・専用チャット・横断検索・AI エージェントを1つにまとめたワークスペースです。project を作るとページ・ボード・チャットが同時にでき、メンバーを外すと配下の権限が一括で失効します。当初は複数 SaaS を横断検索する RAG 検索でしたが、タスク管理+チャット統合へ舵を切りました。
promptflow(Prompt Flow Studio) — OpenAI・Anthropic・Google の複数 AI を1画面で扱い、チャット・比較・討論・ワークフローの4モードで動かせる SaaS です。同じ問いを複数モデルに並べて比較・討論させ、生成物はバージョン管理します。自社プロダクトの中でも開発規模は最大級で、iOS 版も並行して作っています。

local-commander — クラウドではなく手元のローカル LLM を判断役に据える、AI 開発オーケストレーターです。タスクを投げるとローカル LLM が「ローカルで済む/クラウドが要る/承認必須」などに仕分け、必要なときだけ人の承認を挟んで Codex や Claude Code に実装を回し、push・PR・レビュー・merge・タスク反映まで自動化します。専用マシン(DGX Spark)の購入も勘ではなく、16ケースのベンチマーク実測で判断しました。
claude-plugins(ELN workflow) — 全プロジェクトに同じ仕様プロセス・品質基準・運用規律を Claude Code 経由で配る、自社の私設プラグイン基盤です。「守ってください」という文書ではなく、守らないと先に進めない skill として実装しているのが肝で、実観測(ログ・DB・テスト出力)がない限り「完了」と言わせません。このブログの作り方そのものでもあります。
alive365 — 複数地点からの死活監視・障害管理・ステータスページ・ブラウザ操作チェックを1つにした稼働監視 SaaS です。「監視する側にこそ固定費がかかる」という発想から、HTTP チェックは常駐しない構成にし、ブラウザチェックだけ都度起動にして固定費ゼロを狙い、実際に月58〜66 ドルかかっていた常時課金の回線装置を全廃しています。

eln-infra-ops — SSH で手打ちする運用をやめ、自宅の CI サーバー群(数台+専用マシン)をコードから何台でも再現できるようにした社内インフラ基盤です。合格の判定を設計書ではなく、実機の kill-test(1台を実際に落として、全サービスが残った台で無停止に生き残るか)に置いているのが特徴です。2台が同時に主になってしまう事故を実際に起こし、同日中に対策を入れて切り替え18秒まで詰めました。

kale — AWS・GCP・Azure・OpenAI のコストを1画面で把握し、予算超過や異常を Slack / Teams に知らせるマルチクラウドのコスト管理基盤です。プロバイダの追加は設定登録だけで済み、GCP と OpenAI を1日で足しました。kale 自身を使って、Claude Code のエージェントが毎時の異常検知と日次レポートで、全プロダクトのコストを見張っています。


tessvia — 1つのシナリオ正本から「チュートリアル再生・操作マニュアル生成・E2E テスト・生存監視」の4つを導く基盤です。もとは「自然言語から E2E テストを作る道具」と「社内チュートリアル配信の道具」の別プロジェクトでしたが、色の指定まで一致するほど同じ設計を独立に二度作っていたと分かり、1つに統合しました。マニュアル生成はクラウドではなく手元の claude -p に投げる構成です。


18のプロダクトは、独立した製品カタログではありません。会社の全業務を AI で回すという1つの目的から、作る・監視する・補修する・管理する、と必要が入れ子に生まれた結果です。気になる1つを入口に、その前後(何のために作られ、次に何を必要としたか)をたどると、全体の意図が見えてきます。
各プロダクトの最新の画面・詳細・多言語版(英語・韓国語・中国語・タイ語)は、会社の公式プロダクトページにまとめ、随時更新しています。まずはこちらで、いま何が動いているのかを俯瞰してみてください。
上原正吉。EarthLink Network Co., Ltd. でAI開発をしています。2025年からClaude Codeを開発の主体に据え、今は20を超えるプロダクトを1人で同時に開発・運用しています。この連載では、その現場で実際に起きたこと(うまくいったことも、失敗も)を、数字と一緒に書いていきます。
また、AIで業務や開発を組み替えたい会社・チーム向けに、AI活用のコンサルティングも受け付けています。ご相談は www.eln.ne.jp からどうぞ。